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説得力のある記述法

◆  「第1章 失敗のマネジメント」を例に、マシュー・サイドの記述法を説明する。

・ 第1章は3単元で構成されている。
・ 多くの読者は、書名にある”Black Box”を見て、航空機の事故事例から記述が始まっているのではないかと予想するであろう。しかし、物語は医療過誤から始められている。幼い1男1女をもつ夫婦の妻エレインが、普通の病気にかかり、評判の良い病院で経験豊富な医師の執刀で手術を受け、一命を落とす。ここでは医療業界の「調査嫌い」が指摘される。しかし妻を失った夫マーティン・ブロミリーは旅客機のパイロットだった。
・ 航空機事故は第2の事例として登場する。歴史上もっとも有名な事故として、ユナイテッド航空173便の悲劇が紹介される。良好な飛行コンディションの元で、経験豊富なパイロットたちが着陸しようとして降ろしたはずの車輪の確認が取れず、調査している間に燃料が切れて墜落する。この1978年末の事故が、航空機業界の事故調査の在り方の転機になる。航空機業界では独立機関が事故調査に当たる。一方、医療業界は当事者の視点でしか医療事故を見ていない。
・ 第3単元は先行事例を含む多くの航空機事故、医療事故、中世まで哲学(科学)を支配していたアリストテレスの誤り等をふり帰ることにより、多くのデータからパターンを学ぶフィードバックの重要性をサイドは主張する。この章の記述は、第1単元で取り上げられた医療事故に対する調査報告書に載っているマーティンの次の一言で閉じられる。
「この調査で多くの人々が学び、さらに大勢の人々の命が助かることを願います。」
・ マシュー・サイドはマーチン・ブロミリーのことを「私がこれまで取材した人の中で最も感銘を受けた人物の一人」と記述している。

 

◆ 「第6章 究極の成果をもたらす マインドセット」を例に、マシュー・サイドの論理展開法(下図参照)を説明する。

・まず、デビッド・ベッカム(サッカー選手)、マイケル・ジョーダン(バスケットボール選手)がいかに練習したか、そしていかに自分自身が積み重ねた失敗を重視したかを記述する。

・続いて、マインドセット(思考傾向;成長型と固定型に二分される)研究とGRIT調査(やり抜く力を調査対象とするアンケート調査)から得られた心理学的知見を解説する。

・「失敗から学べれば進化する」と結論付ける。

・マインドセットとは ······ In Preparation

・GRIT調査とは ······ In Preparation

  (2023-11-6記)

 

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